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AI 活用

AI エージェントにも守られる、デザインシステムのガイドラインの書き方。Figma の Guidelines から考える、項目・型・確かめ方

公開 読了まで 約11分

( この記事の要点 )

  1. ライブラリが渡せるのは部品と変数まで。エージェントに足りないのは「どの場面で、どれを選ぶか」という判断で、それをガイドラインに書く
  2. 値ではなく変数の名前で、推奨を1つに決め、間違えやすい判断は「シナリオ・Do・Don't・理由」の型で書く。例外のない禁止は言い切る
  3. Figma の Guidelines を読むのは Figma agent。正本を1つにして、コード側には AGENTS.md・CLAUDE.md などで同じルールを届け、試す依頼で確かめる

「ライブラリはちゃんと作ってあるのに、AI が作った画面だけ余白も色もばらばら」。エンジニアが Figma MCP(Figma のデータを AI エージェントに渡すための MCP サーバー)とコーディングエージェントで画面を作り始めたチームで、よく聞く悩みです。

Figma は 2026年10月の Config India 2026 で、公開したデザインライブラリにガイドラインのファイルを添えられる「Guidelines」をオープンベータとして発表しました。ヘルプでは、ガイドラインの役目を「エージェントがライブラリの資産だけからは推測できないこと」を伝えるもの、と説明しています。

この記事の結論は、ライブラリにあるのは「部品」で、エージェントに足りないのは「どの場面で、どれを選ぶか」という判断だということです。Figma の機能が変わっても使えるように、ガイドラインに何を書き、どんな型で書き、守られているかをどう確かめるかを、作例と一緒にまとめます。

Figma の Guidelines でできること(2026年11月時点)

機能や条件は変わりやすいので、この節にまとめます。出典は Figma のヘルプ「Add guidelines files to a design library」と「What's new from Config India 2026」です。

項目 内容(2026年11月時点)
状態 オープンベータ
使えるプラン Professional・Education・Organization・Enterprise(Starter は対象のプランに入っていない)
置き場所 公開済みのデザインライブラリ。追加にはそのファイルの編集権限が必要
読むエージェント Figma agent。そのライブラリを使う依頼のとき、裏で自動的に渡される
ファイルの形式 Markdown(.md)・テキスト(.txt)・JSON(.json)
量の目安 3〜8 個のファイルで合計 100KB 未満が推奨。合計の上限は 200KB
追加の手順 ファイルメニュー → Library → Manage guidelines... → Upload → Apply changes
注意 ベータの間は、ファイルを自分で作ってアップロードする。ガイドラインのあるライブラリを使うと、AI クレジットの消費が増えることがある。Figma Make の Make kit を作るときには、現時点では使われない

ヘルプには、Figma MCP や外部のコーディングエージェントが Guidelines を読むという記載はありません。コード側への届け方は、あとの節で別に書きます。

エージェントが外すのは「判断」が書かれていないから

コンポーネントと変数のライブラリから、エージェントは「何があるか」は読み取れます。けれども、次のような判断はライブラリのどこにも書かれていません。

  • 主ボタンと副ボタンを、どの場面で使い分けるか
  • カードの内側とカード同士の間に、どの余白の変数を使うか
  • 似たコンポーネント(たとえばトーストとバナー)のどちらを選ぶか
  • この組み合わせだけは使わない、という禁止

人のデザイナーなら、レビューや過去の画面から少しずつ覚えていきます。エージェントは、書かれていないことは毎回推測するしかありません。だから、ガイドラインは「部品の説明書」ではなく「選び方の判断の記録」として書きます。

左に「ライブラリ」の箱があり、中に「部品」「変数」。右に「ガイドライン」の箱があり、中に「どの場面で」「どれを選ぶか」「使わない組み合わせ」。2つの箱から矢印が「エージェント」へ集まり、その先が「画面」。ガイドラインの箱だけが濃い水色の線で強調されている
ライブラリが渡すのは部品と変数。場面ごとの選び方と禁止は、ガイドラインで渡す(説明用の図です)

何を書くか:ファイルの分け方

Figma のヘルプは、ファイル名の例として overview.md、guidelines.md、components.md、examples.md、anti-patterns.md、best-practices.md を挙げています。どこから手をつけるかについては、色・余白・角丸から始めるのがよいとしています。これを踏まえると、最初の版は次の5つで十分です。

ファイル 書くこと
overview.md このライブラリの対象(どのサービスの、どの画面か)、全体の方針、迷ったときの優先順位
tokens.md 色は役割(文字・背景・境界・状態)と避ける組み合わせ、余白は尺度と使う場所、角丸は変数ごとの使う場所
components.md 似たコンポーネントの選び分け、バリアントの選び方、使ってはいけない場面
anti-patterns.md 例外のない禁止。過去に AI や人が実際に外した例
examples.md よくある画面(一覧、詳細、フォーム、確認ダイアログ)の組み立ての例

書くときのコツは3つです。

  • 値ではなく変数の名前で書く。「16px」ではなく、ライブラリにある変数の名前で書きます。エージェントが変数を探す手がかりになります。変数の名前を役割で付けておけば(例:space/card-inset)、値を変えてもガイドラインを直さずに済みます。
  • 選択肢を並べるだけにせず、推奨を1つ書く。ヘルプも、選べるものを説明するだけでなく、はっきりした推奨を書くよう勧めています。
  • 例外のないルールは「使わない」と言い切る。「なるべく避ける」と書くと、エージェントは使ってよい場面を探します。

どう書くか:シナリオ・Do・Don't・理由の型

間違えやすい判断は、ヘルプが勧める「シナリオごとの Do と Don't」で書きます。1つのシナリオに、場面の説明、Do の例、Don't の例、その理由をそろえます。GOV.UK Design System が各コンポーネントに「When to use」と「When not to use」を並べ、Atlassian Design System がボタンの使い方を Do と Don't の対で示しているのと同じ考え方です。

components.md の1節の例です(説明用の作例です)。

## 元に戻せない操作の確認ダイアログ

場面:削除・解約・公開の取り消しなど、元に戻せない操作の直前に出すダイアログ。

- Do:実行のボタンは Button / Danger、取り消しは Button / Secondary。
  ボタンの文言は「削除する」のように操作を書く。
- Don't:Button / Primary を2つ並べる。実行のボタンを「OK」にする。
- 理由:Primary は「先に進む」操作の印。元に戻せない操作と同じ見た目にすると、
  押し間違いが起きやすい。文言が「OK」だと、何が起きるか分からない。

tokens.md の余白の節の例です(変数の名前と値は作例です)。

## 余白

- 余白は space/* の変数だけを使う。数値を直接書かない。
- カードの内側は space/card-inset、カード同士の間は space/card-gap、
  セクションの間は space/section。
- Don't:13px・18px など、変数にない値。カードの内側と外側を同じ変数にする。
- 理由:内側より外側を広くすると、どこまでが1枚のカードかが分かる。
上が「NG」、下が「OK」の削除の確認ダイアログの作例。どちらも見出し「削除しますか?」と「この操作は取り消せません。」。NG は同じ墨色の主ボタン「キャンセル」と「OK」が並び、濃い水色の印で「1 同じ見た目」「2 何が起きるか不明」。OK は白い副ボタン「キャンセル」と赤い「削除する」が並び、濃い水色の印で「1 操作を書く」「2 役割で色を分ける」
ガイドラインの1節をそのまま画面にした例。Do と Don't が画面の違いとして確かめられるように書く(説明用の作例です)

コード側にも同じルールを届ける(Figma MCP・AGENTS.md)

画面を作るのが Figma agent だけとは限りません。エンジニアがコーディングエージェントで実装するなら、同じ判断をコード側にも渡す必要があります。2026年11月時点で、使える入口は次のとおりです。

届け先 仕組み(2026年11月時点)
Figma MCP サーバー MCP のプロンプト create_design_system_rules で、エージェント向けのルールのファイルを作れる。search_design_system は、つながったライブラリからコンポーネント・変数・スタイルを探す
AGENTS.md リポジトリのルートに置く、エージェント向けの説明のファイル
Claude Code ./CLAUDE.md か ./.claude/CLAUDE.md を読む。AGENTS.md は直接は読まないので、CLAUDE.md に @AGENTS.md と書いて取り込む。.claude/rules/ にトピックごとのファイルも置ける
Cursor .cursor/rules に .mdc の拡張子で置く(.md は無視される)。AGENTS.md もルートとサブディレクトリで使える

おすすめは、ガイドラインの正本をリポジトリに1つだけ置くことです。たとえば design-guidelines/ に Markdown で書き、同じファイルを Figma のライブラリにアップロードし、AGENTS.md からも参照します。

<!-- AGENTS.md(抜粋) -->
## UI を作るとき
- 先に design-guidelines/ の overview.md・tokens.md・components.md・anti-patterns.md を読む。
- 色・余白・角丸は、デザイントークンの変数だけを使う。値を直接書かない。
- 迷ったら anti-patterns.md の禁止を優先する。

Figma 側だけを直して、コード側のルールが古いまま、というずれを防げます。

上の中央に「正本」と書いた1枚の紙(design-guidelines/)。そこから左下へ矢印で「Figma のライブラリ」(Guidelines)とその先の「Figma agent」、右下へ矢印で「AGENTS.md」「CLAUDE.md」とその先の「コーディングエージェント」。正本の紙だけが濃い水色の線で強調されている
ガイドラインの正本を1つにして、Figma とコードの両方へ配る(説明用の図です)

守られているかを確かめる

ガイドラインは、書いたら終わりではありません。エージェントに同じ依頼を出して、出てきた画面を確かめます。

  1. 試す依頼を5本ほど決める。一覧、詳細、フォーム、確認ダイアログ、空の状態など、よく作る画面で。
  2. ガイドラインを足す前と後で、同じ依頼を出す。変数にない値、選ぶべきでないコンポーネント、禁止の組み合わせを数えます。
  3. 外れたら、その例を anti-patterns.md に足す。「何をしたか」「代わりに何をするか」「理由」の3つで書きます。
  4. 量を確かめる。合計が推奨の 100KB を超えてきたら、重なっている記述をまとめます。

合計の大きさは、次のコマンドで確かめられます(Ubuntu 24.04 の bash で動作を確かめました)。

# design-guidelines/ の .md・.txt・.json の合計(バイト。100KB ≒ 100000 バイト)
find design-guidelines -type f \( -name '*.md' -o -name '*.txt' -o -name '*.json' \) \
  -exec cat {} + | wc -c

ガイドラインが長くなると、AI クレジットの消費が増えることがあります。量を増やすより、外れやすい判断に絞って書くほうが効きます。

まとめ:最初の1週間でやること

  • □ よく外れる判断(色・余白・角丸、似たコンポーネントの選び分け)を書き出したか
  • □ 値ではなく変数の名前で、推奨を1つに決めて書いたか
  • □ 間違えやすい判断を「シナリオ・Do・Don't・理由」の型で書いたか
  • □ 例外のない禁止を anti-patterns.md に言い切りで書いたか
  • □ 正本を1つにして、Figma のライブラリと AGENTS.md・CLAUDE.md の両方に届けたか
  • □ 試す依頼を決めて、足す前と後で比べたか

ガイドラインを「エージェントに読ませる文書」として書き直すと、新しく入ったメンバーにも伝わりやすい文書になります。ツールが変わっても、判断を言葉にしておいた分は残ります。

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